18世紀フランス絵画のきらめき ルーヴル美術館展 [ロココから新古典派へ]

Les peintures francaises du XVⅢeme siecle de la collection du Musee du Louver

東京都美術館

19970419-19970713

No:0005_0001

プシュケとアモールの結婚

Le Mariage de Psyche et de l'Amour

ブーシェ、フランソワ

油彩・カンヴァス、93.0×130.0cm(Oil on canvas 93.0×130.0cm)

1744年(1744)

ルーブル(le musee du Louvre)

【絵画の中のギリシア神話】 プシュケの話

 プシュケはとても美しかった為(もっともギリシア神話の98%以上は美女ですが……)、美の女神アフロディテより崇拝されました。アフロディテは腹を立て、息子のアモールに醜男と結婚するように仕向けますが、アモールはうっかりと「惚れる矢」で自分を傷付けてプシュケを愛してしまいます。

 

 プシュケは神託により、花嫁としてアモールの用意した宮殿に連れ去られます。この宮殿では美しい音楽が流れ、自動的に食事が用意され、何不自由なく暮らせるようになっていました。夜になるとアモールが臥所を共にしましたが、姿は見せませんでした。この話を聞いたプシュケの姉(2人います)は、その夫は怪物だろうから殺してしまった方がいいと警告し、プシュケもそれに従いアモールを殺そうとします。

 

 夜、眠りこんだ夫を殺そうとランプでその姿を見ると怪物ではなく神のアモールでした。この時、ランプの油がアモールの肩に落ちてアモールは目を覚まします。姿を見られたアモールは、プシュケのもとを去ってしまいます。

 この後、プシュケはアモールの母であるアフロディテを訪れ、許しを請います。アフロディテは穀物の選り分けや人食い羊の羊毛を集めさせる等の難題を出しますが、周りの助けにより、これらをクリアします。

 

 最後にアフロディテは、冥界に行きペルセポネから美をもらってくるように命令します。ここでも助けがあり、プシュケは死なずに冥界に行き、美の入った瓶を手に入れます。しかし帰り途中、つい好奇心に負けて瓶を開けてしまいます。中からは美ではなく「死の眠り」が出てきて、プシュケは眠る屍となってしまいますが、夫・アモールに助けられます。

 

 この後、アフロディテはプシュケを許し、不老不死となってアモールと正式に結婚します。

 

 この絵画は青字部分を描いた物と思います。カタログには、

 

 この作品は紀元2世紀の古代ローマの作家アプレイウスによる『変身物語あるいは黄金の驢馬』で語られる挿話を表している。クピドに恋したプシュケは、恋人を見てはいけないという禁を犯してしまう。彼女は罰としてクピドを探して休みなく地上をさまよい、かずかずの出来事に遭遇するが、最後にはオリュンポスに迎えられ愛神と結婚する(カタログp106抜粋)。

 

 とあります(クピドとはアモールの事です)。綺麗な物語なのですが、どうもプシュケは「助けられ過ぎ」なような気がします。最初にこの物語を読んだ時「ギリシア神話の中では異質だなぁ」と思いました。ギリシア神話というよりは、比較的新しいローマ神話の為だと思います(あるいはプシュケが余りにも美女だったから、なのかな…?でも、この物語は個人的に気に入っています。名画も多いですしね)。


No:0005_0002

リュンクス王からトリプトレモスを守る女神ケレス

Ceres protegeant Triptoleme contre le roi Lyncus

デュモン・ル・ロマン(本名ジャック・デュモン)

油彩・カンヴァス、76.0×92.0cm(Oil on canvas 76.0×92.0cm)

1732年(1732)

ルーブル(le musee du Louvre)

 本作品の主題はオウィディウスの『変身物語』(V)から採られている。スキュティアの王リュンクスは、農業を豊かにする才能を授かったアテネ人トリプトレムスに嫉妬し、睡眠中に暗殺しようとしたが、そのとき、リュンクス王はケレスによって大山猫に変身させられたという話である(カタログp100抜粋)。


No:0005_0003

アクタイオンに驚く水浴中のディアナとニンフたち、日没の効果

Diane et ses nymphes au bain surprises par Acteon. Effet de soleil couchant

ヴァラン、ジャック=アントワーヌ

油彩・カンヴァス、112.0×150.0cm(Oil on canvas 112.0×150.0cm)

1810年のサロン(Salon de 1810)

ルーブル(le musee du Louvre)

【絵画の中のギリシア神話】 アルテミスの話

 ディアナはローマ神話の女神ですが、後にギリシア神話の女神アルテミスに統一されていますので、同一の女神と考えて差し支えないかと思います。

 アルテミスはアポロンという男神と双子の姉弟で、父親は大神ゼウス、母親はレートーというのが一般的です。また、アポロンは太陽の神、アルテミスは月の神といかにも双子らしい役割を担っています。2神ともオリュンポス12神に名を連ねています。

 

 アルテミスは慈悲深い女神ですが、厳しい面も持っています。また、アルテミスはやはり月の女神のセレネやヘカテという女神、ニンフのカリストーとも同一視されることがあります。例えば「エンデュミオーン」の話ではセレネではなくアルテミスが接吻しているという記述が見られます。

 個人的にはアルテミスは厳格な処女神、という印象がありますので、例え接吻といえどそのような行為は行わなかったと思っています(オリオンの話もありますが、あれも恋心を持ったぐらいならいいのかなぁ、と。でもその時点でアフロディテに負けちゃいそうですが……)。

 

 アルテミスはお供のニンフを引き連れ、男性的な狩りをしているイメージがあります。しかし、何故か絵画では処女神なのに「サービスショット(?)」が多いような気がします。狩りの後の休憩や水浴のシーンが多く、アルテミスとしては「女神の役割としては、そっちじゃないだろ」と怒られそうですよね。

 

 この絵画は青字部分を描いた物と思います。カタログには、

 

 水浴中の裸のディアナを彼女の従者とともに驚かす若い男は、鹿に変えられ自分の犬に食べられてしまう(カタログp186抜粋)。

 

 とあります。アクタイオンはテバイという町の祖であるカドモスの孫で、狩り好きな青年でした(アクタイオンはあのケイロンから教育を受けた、との話もあるそうで、そうだとするとかなり優秀だったのではないかと思います)。

 

 ある日、狩りの疲れを癒そうと泉を見つけに行くと、その泉で水浴中のアルテミスを(運悪く)見てしまいます。お付きのニンフたちが裸身を隠すためにアルテミスの周りに集まりましたが、隠し切れずアクタイオンは裸身のアルテミスを見てしまいます。

 アルテミスは裸身を見たアクタイオンを鹿に変え、鹿となったアクタイオンは自分の狩猟犬に襲われ、命を落としてしまいます。

 

 アルテミス、処女神とはいえちょっと厳しすぎますよね。アクタイオンも見たくて見た訳ではないのに。でもまぁ、流石ゼウスの血を引いているな、と逆に納得してしまうエピソードとも思えます。


No:0005_0004

太陽神の馬車を御するファエトン

Phaeton conduisant le char du soleil

ベルタン、ニコラ

油彩・カンヴァス、89.5×125.0cm(Oil on canvas 89.5×125.0cm)

1720年頃(c.1720)

ルーブル(le musee du Louvre)

 すぐに馬車は走り始め、ファエトンはたちまち激した馬を御することができなくなるだろう。彼は空で道に迷い、あまりにも低く飛んだので大地が発火してしまい、ついにユピテルがファエトンに雷電を投げ付けてこの無軌道な馬車を止めることを決意する(カタログp50抜粋)。


No:0005_0005

水浴のディアナ

Diane au bain

ヴァトー、ジャン=アントワーヌ

油彩・カンヴァス、80.0×101.0cm(Oil on canvas 80.0×101.0cm)

1707年?(1707?)

ルーブル(le musee du Louvre)

【絵画の中のギリシア神話】 アルテミスの話

 ディアナはローマ神話の女神ですが、後にギリシア神話の女神アルテミスに統一されていますので、同一の女神と考えて差し支えないかと思います。

 アルテミスはアポロンという男神と双子の姉弟で、父親は大神ゼウス、母親はレートーというのが一般的です。また、アポロンは太陽の神、アルテミスは月の神といかにも双子らしい役割を担っています。2神ともオリュンポス12神に名を連ねています。

 

 アルテミスは慈悲深い女神ですが、厳しい面も持っています。また、アルテミスはやはり月の女神のセレネやヘカテという女神、ニンフのカリストーとも同一視されることがあります。例えば「エンデュミオーン」の話ではセレネではなくアルテミスが接吻しているという記述が見られます。

 個人的にはアルテミスは厳格な処女神、という印象がありますので、例え接吻といえどそのような行為は行わなかったと思っています(オリオンの話もありますが、あれも恋心を持ったぐらいならいいのかなぁ、と。でもその時点でアフロディテに負けちゃいそうですが……)。

 

 アルテミスはお供のニンフを引き連れ、男性的な狩りをしているイメージがあります。しかし、何故か絵画では処女神なのに「サービスショット(?)」が多いような気がします。狩りの後の休憩や水浴のシーンが多く、アルテミスとしては「女神の役割としては、そっちじゃないだろ」と怒られそうですよね。

 

 この絵画は青字部分を描いた物と思います。カタログには、

 

 そばに置かれた箙がなければ、誰がこの水浴の裸の女性が狩りの女神ディアナだとわかるだろう。オウィディウスの物語に反して、視線から彼女を守る幕の働きをする草木も、女神が一人きりにならないように登場するニンフたちも、画家は描いてはいない。ディアナが標微物としてふつう額に付けている三日月も見られない(カタログp60抜粋)。

 

 とあります。カタログにはその後にも「ニンフの1人ではないか」と書かれています。確かにアルテミスにしては、ぽつんと1人だけというのは奇妙ですし、箙だけ描かれているのは侍女のニンフがアルテミスの箙を持たされているから、という方が自然なような気がします。

 

 実際に観た時も「アルテミスにしてはなんか違和感があるなぁ」と思いましたが、まぁ題名が「水浴のディアナ」となっていますので、1人でいるアルテミスなんだな、と思って観た方が素直なのかもしれないですね。


No:0005_0006

プシュケとアモール

Amour et Psyche dit aussi Psyche recevant le premier baiser de l'Amour

ジェラール、フランソワ

油彩・カンヴァス、186.0×132.0cm(Oil on canvas 186.0×132.0cm)

1798年のサロン(Salon de 1798)

ルーブル(le musee du Louvre)

【絵画の中のギリシア神話】 プシュケの話

 プシュケはとても美しかった為(もっともギリシア神話の98%以上は美女ですが……)、美の女神アフロディテより崇拝されました。アフロディテは腹を立て、息子のアモールに醜男と結婚するように仕向けますが、アモールはうっかりと「惚れる矢」で自分を傷付けてプシュケを愛してしまいます。

 

 プシュケは神託により、花嫁としてアモールの用意した宮殿に連れ去られます。この宮殿では美しい音楽が流れ、自動的に食事が用意され、何不自由なく暮らせるようになっていました。夜になるとアモールが臥所を共にしましたが、姿は見せませんでした。この話を聞いたプシュケの姉(2人います)は、その夫は怪物だろうから殺してしまった方がいいと警告し、プシュケもそれに従いアモールを殺そうとします。

 

 夜、眠りこんだ夫を殺そうとランプでその姿を見ると怪物ではなく神のアモールでした。この時、ランプの油がアモールの肩に落ちてアモールは目を覚まします。姿を見られたアモールは、プシュケのもとを去ってしまいます。

 この後、プシュケはアモールの母であるアフロディテを訪れ、許しを請います。アフロディテは穀物の選り分けや人食い羊の羊毛を集めさせる等の難題を出しますが、周りの助けにより、これらをクリアします。

 

 最後にアフロディテは、冥界に行きペルセポネから美をもらってくるように命令します。ここでも助けがあり、プシュケは死なずに冥界に行き、美の入った瓶を手に入れます。しかし帰り途中、つい好奇心に負けて瓶を開けてしまいます。中からは美ではなく「死の眠り」が出てきて、プシュケは眠る屍となってしまいますが、夫・アモールに助けられます。

 

 この後、アフロディテはプシュケを許し、不老不死となってアモールと正式に結婚します。

 

 この絵画は青字部分を描いた物と思います。カタログには、

 

 ギリシャ語で魂を意味するプシュケは、人間の魂と神の愛との結合として登場したのである(カタログp192抜粋)。

 

 とあります。ギリシア語でプシュケは「魂(霊魂)」という意味と「蝶」という意味も持っているそうです。ですので、この絵画ではプシュケの頭の上に小さな蝶が描かれています。ポストカードを良~く見ると小さな蝶が描かれているのが確認できます(本サイトのファビコンはこの絵画の縮小ですが、点のような蝶がギリギリ入っています)。

 

 実はこの絵画、一番好きな絵画です。トマス・ブルフィンチさんの「完訳 ギリシア・ローマ神話」の36版、p156に白黒の小さな写真になって載っていて「この本物は綺麗だろうな。1度観てみたいな」と思っていたら、2回も日本も来てくれました。最初に見た時(1997年の東京都美術館)は生まれて初めての鳥肌が立ちました。またいつか、来てくれないかな……。


No:0005_0007

バッコスの凱旋

Le Triomphe de Bacchus

ラ・フォス、シャルル・ド

油彩・カンヴァス、157.0×135.0cm(Oil on canvas 157.0×135.0cm)

1700年(1700)

ルーブル(le musee du Louvre)

 テュルソスを手に、像の引く凱旋車に座ったバッコスは、酩酊の快感に興奮したサテュロスやバッカント(バッコスの女信徒)、プットーたちといった馴染みの仲間に取り巻かれている(カタログp42抜粋)。


No:0005_0008

フローラの勝利

Le Triomphe de Flore

カレ、アントワーヌ=フランソワ

油彩・カンヴァス、53.5×96.5cm(Oil on canvas 53.5×96.5cm)

1781年のサロン(Salon de 1781)

ルーブル(le musee du Louvre)

 

 

No:0005_0009

カリュプソに冒険談を話すテレマコス

Telemaque raconte ses aventures a Calypso

ラウー、ジャン

油彩・カンヴァス、114.5×146.0cm(Oil on canvas 114.5×146.0cm)

1722年(1722)

ルーブル(le musee du Louvre)

 嵐のために難破して、テレマコスとメントルはニンフのカリュプソが支配するオギュギアの島の砂浜に流れ着いた。カリュプソは数年前にオデュッセウスを迎えたときと同様に、彼らを歓迎した(カタログp56抜粋)。