フィレンツェとヴェネツィア エルミタージュ美術館所蔵 イタリア・ルネサンス美術展

Florence and Venice Italian Renaissance paintings and sculpture from the State Hermitage Museum

国立西洋美術館

19990320-19990620

No:0041_0001

化粧するヴィーナスと二人のキューピッド

Venus at her Toilet with Two Cupids

ティツィアーノの工房

油彩、カンヴァス、130×105cm(Oil on canvas 130×105cm)

?年(?)

エルミタージュ美術館(The State Hermitage Museum)

 「化粧する(または鏡を見る)ヴィーナス」は大きな人気を誇った構図で、エルミタージュにはこの構図による3点のヴァージョンが別々の時期に収蔵された(カタログp146抜粋)。


No:0041_0002

ディアナ

Diana

パオロ・ヴェロネーゼ

油彩、カンヴァス、28×16cm(Oil on canvas 28×16cm)

1560年頃(c.1560)

エルミタージュ美術館(The State Hermitage Museum)

【絵画の中のギリシア神話】 アルテミスの話

 ディアナはローマ神話の女神ですが、後にギリシア神話の女神アルテミスに統一されていますので、同一の女神と考えて差し支えないかと思います。

 アルテミスはアポロンという男神と双子の姉弟で、父親は大神ゼウス、母親はレートーというのが一般的です。また、アポロンは太陽の神、アルテミスは月の神といかにも双子らしい役割を担っています。2神ともオリュンポス12神に名を連ねています。

 

 アルテミスは慈悲深い女神ですが、厳しい面も持っています。また、アルテミスはやはり月の女神のセレネやヘカテという女神、ニンフのカリストーとも同一視されることがあります。例えば「エンデュミオーン」の話ではセレネではなくアルテミスが接吻しているという記述が見られます。

 個人的にはアルテミスは厳格な処女神、という印象がありますので、例え接吻といえどそのような行為は行わなかったと思っています(オリオンの話もありますが、あれも恋心を持ったぐらいならいいのかなぁ、と。でもその時点でアフロディテに負けちゃいそうですが……)。

 

 アルテミスはお供のニンフを引き連れ、男性的な狩りをしているイメージがあります。しかし、何故か絵画では処女神なのに「サービスショット(?)」が多いような気がします。狩りの後の休憩や水浴のシーンが多く、アルテミスとしては「女神の役割としては、そっちじゃないだろ」と怒られそうですよね。

 

 この絵画は青字部分を描いた物と思います。カタログには、

 

 この小品は狩りの女神ディアナを表しており、間違いなく壁画のための準備スケッチである。<略>我々の考えでは、この≪ディアナ≫の芸術的質の高さは、ヴェロネーゼの真筆であることを明白に物語っているように思われる(カタログp200抜粋)。

 

 とあります。壁画のためとありますが、そのまま絵画の作品としていいように思えますよね。ただ、何故弓を持たずに矢だけ持っているのでしょうか? 「矢」はアフロディテやエロスのイメージがあり(金の矢→恋に落ちる、鉛の矢→恋を拒む)、アルテミスやアポロンは「銀の弓」の方が似合っているような気がします。

 

 カタログには「≪ミネルウァ≫と対をなしており」との記述があり、槍を持ったアテナと盾が描かれています。アテナ、アルテミス共に処女神ですしアトリビュートとしての武具は違和感はないのですが「弓がない」というのだけが、ちょっと気になる作品でした(まぁ深い意味はないと思います)。