フェルメール展 光の天才画家とデルフトの巨匠たち
No:0018_0001
ディアナとニンフたち
Diana and Her Nymphs
油彩・カンヴァス、97.8×104.6cm(Oil on canvas 97.8×104.6cm)
1655-1656年頃(c.1655-1656)
ハーグ、マウリッツハイス王立美術館(Koninkrijk Kabinet van Schlderijen Het Mauritshuis,The Hague)
【絵画の中のギリシア神話】 アルテミスの話
ディアナはローマ神話の女神ですが、後にギリシア神話の女神アルテミスに統一されていますので、同一の女神と考えて差し支えないかと思います。
アルテミスはアポロンという男神と双子の姉弟で、父親は大神ゼウス、母親はレートーというのが一般的です。また、アポロンは太陽の神、アルテミスは月の神といかにも双子らしい役割を担っています。2神ともオリュンポス12神に名を連ねています。
アルテミスは慈悲深い女神ですが、厳しい面も持っています。また、アルテミスはやはり月の女神のセレネやヘカテという女神、ニンフのカリストーとも同一視されることがあります。例えば「エンデュミオーン」の話ではセレネではなくアルテミスが接吻しているという記述が見られます。
個人的にはアルテミスは厳格な処女神、という印象がありますので、例え接吻といえどそのような行為は行わなかったと思っています(オリオンの話もありますが、あれも恋心を持ったぐらいならいいのかなぁ、と。でもその時点でアフロディテに負けちゃいそうですが……)。
アルテミスはお供のニンフを引き連れ、男性的な狩りをしているイメージがあります。しかし、何故か絵画では処女神なのに「サービスショット(?)」が多いような気がします。狩りの後の休憩や水浴のシーンが多く、アルテミスとしては「女神の役割としては、そっちじゃないだろ」と怒られそうですよね。
この絵画は青字部分を描いた物と思います。カタログには、
いかなる場面が描かれているのか、はっきり判別もできない。一方、リートケの主張するところによれば、ここには、オウィディウスの『変身物語』中の挿話(2: 442-65)、つまり「狩りに疲れきって、太陽のすさまじい熱さにやられた」ディアナと侍女の狩人が、休息を取って、衣服を脱ぎ、小川で沐浴しようという瞬間が描写されているという(Liedtke 2000,pp. 192-193;2001,cat. 64)。しかし、それは、1人の乙女、カリストが、自分の妊娠が発見されることを恐れ、服を脱がぬことの理由を探しながら、「伏し目がちに」沐浴を断る瞬間でもある。リートケは、右奥に立ち、服を着たまま、両手をお腹の前でしっかり握る女性がカリストだとした(カタログp168抜粋)。
とあります。柔らかい感じの絵画だなと思っていましたが、もしカリストの話だとするとイメージが一変しますね。
カリストは処女神アルテミスに仕えるアルカディア王の娘またはニンフなのですが、大神ゼウスが彼女を汚してしまいました(カリストという名前は「最も美しい」というカリステから派生したらしいので、まぁゼウスなら目を付けるでしょう)。この後、カタログにあるようにアルテミス(ディアナ)に妊娠を気づかれ、追放されてしまいます。
その後、ゼウスの正妻ヘラに姿を熊に変えられ(心は変わらず)、森の中で偶然出会った成長した息子のアルカスに殺されそうになりますが、ゼウスに救われ息子と共に星座となりました(大熊座と小熊座)。
ところが、ヘラにはこれが気に入りません。浮気相手が天上で輝いていたら、まぁ確かに気分は悪いでしょう。
ヘラはオケアノスとテテュス(この夫婦の神は、ホメロス 著/松平千秋 訳 「イリアス(下)」(岩波文庫)の第十四歌 ゼウス騙し(五二二行) にあるようにヘラの育ての親っぽい所があります)に、この星座が聖なる海に浸からないように頼んだ為、北極星の回りを海に浸からず回り続けるようになりました。
カリストさん、美貌だったばっかりに踏んだり蹴ったりですよね。
また、この絵画については、
≪ディアナとニンフたち≫はフェルメールによる唯一の神話画である(カタログp168抜粋)。
とあり、その絵画が日本で観れて更にポストカードになってくれたのは、とてもラッキーだったと思います。