絵画の中のギリシア神話

第005話 イカロスの話 

 イカロスはギリシア神話の中では「ちょい役」です。名工ダイダロスの息子で空を飛んで落ちた、ぐらいしか話はありませんが、何故か有名な絵画が多いような気がします。

 

 何故、空を飛んで落ちたかというと、父親の名工ダイダロスがクレタ島のミノス王を裏切った為、ダイダロス自身がクノッソスに作成した「迷宮」に閉じ込められます。通常の方法では逃げられないので(逃げられたら迷宮ではないですしね)、空から逃げることを思いつきます。

 

 蝋と羽で翼を作り、親子で脱出をします。思惑通りうまく脱出できましたが、子供のイカロスは空を飛べたことを喜び、ついつい高く飛びすぎた為、太陽の熱で蝋が溶けて墜落し、命を落としてしまいます。

 

 この墜落した海はイカロスにちなみ、イカリア海と名づけられています。また、イカロスの死体は当時ドリケー島と呼ばれていた島に流れ着き、ここで埋葬されました。以降、この島もイカリア島と呼ばれるようになりました。「ちょい役」なのに色々と名が残っていますね。

 

 イカロスは途中で墜落してしまいましたが、父親のダイダロスはその後も飛び続け、シシリア島のカミーコスという町に着いたとの事です。このカミーコスはシシリア島の真中より少し南西の場所にありますが、イタリアのシシリア島は「クノッソス→イカリア海」の方向とは全く逆方向です。

 

 恐らく敵(ミノス王)の目をごまかす為だったのではないかと思っています。あるいはダイダロスは元々アテナイの出身ですので、アテナイに行こうとして、そのままシシリア島まで行ったのかもしません。

 

 イカリア島からシシリア島まで約900kmはあります。東京-広島間ぐらいで、のぞみでも約4時間かかりますが、鳥の羽根の翼で時速300kmは出なさそうです。時速50km程度だと24時間かかります。丸一日空を飛んでいるのは辛そうですね……。