絵画の中のギリシア神話
第008話 シュリンクスの話
シュリンクスはアルテミス女神を崇拝するアルカディア地方のニンフ(もちろん美女)です。アルテミス女神は処女神ですので、当然シュリンクスも貞操を守ろうとします。ある日、リュカイオン山からの帰り道、牧神パンが言い寄りますが、彼女は嫌がり逃げます。パンに追いかけられた彼女はラドン川に追い詰められ、川のニンフに助けを求めると、ニンフは彼女を「葦」に変えました。パンはその葦から笛を作り、シュリンクスと名付けました。
地図を見てみるとリュカイオン山とラドン川の間にアルペイオス川があります。リュカイオン山からの帰りにラドン川に追い詰められた、とありますので、既にアルペイオス川を渡っていた事になります。という事はシュリンクスがパンと遭遇したのはアルペイオス川とラドン川の間という事になりそうです。その昔、この辺にパンが住んでいたという事ですね。
さて、実はこのシュリンクスの話は「イーオーの話」の中に出てくる話ですので「物語の中の物語」になります。イーオーの物語を簡単にかいつまみますと、大神ゼウスの浮気相手の一人、イーオーがゼウスの正妻ヘラに捕らわれます。イーオーは牝牛の姿に変えられていて、アルゴスという百目巨人に見張られていました。
ゼウスはヘルメースにこの百目巨人を倒すように命じ、ヘルメースは色々な話をして百目巨人を眠らせ、イーオーを助け出します。この色々な話の中にシュリンクスの話があります(因みに倒された百目巨人は孔雀になりました。孔雀のあの羽の模様は目だったんですね)。