絵画の中のギリシア神話

第009話 ヒュラスの話 

 ヒュラスは英雄ヘラクレスの従者としてある冒険についていき、上陸した地で水を汲みに行きましたが、その美しさ故(ヒュラスは少年です。念の為)、泉のニンフに水中に引き込まれる、という話になります。

 

 ヘラクレスについていったある冒険とは「金羊毛の物語(アルゴ号の冒険)」の事で、英雄イアソンがギリシアの英雄を集めてアルゴ号という船に乗って冒険し、コルキスにある「金羊毛」を取ってくる、という物語です。この物語はとても長くヒュラスの話もこの中の1つになります。

 

 約50人のギリシアの英雄を乗せたアルゴ号はイオールコスから女性だらけの島・レームノス島を経由し、プロポンティス海の南にあるキオスに到着します(地図参照)。ここでヒュラスは水を汲みに行き、ニンフに誘拐されます。

 ヘラクレスはポリュペーモスと共にヒュラスを探しますが見つけられず、ヘラクレスはアルゴ号の冒険をここで止めてアルゴスに戻ります。一方、ポリュペーモスはここでキオスの町を建設し、王となります。

 なお、アルゴ号はその後も冒険を続けて無事コルキスに到着し、金羊毛を奪ってイオールコスへと帰還しています。

 

 ちなみに地図を見るとキオス島という島があり、ここにもキオスの町がありますが、物語の進行上、水を汲みに行ったのは、この島の事ではないようです。

 アルゴ号は「イオールコス→レームノス島→キュージコス」と進み、その先でミュシア地方に上陸しています。ヒュラスが誘拐された後も東に進み、ボスポロス海峡を渡っていますので、キオス島でないことは確かのようです。