黄金伝説展―古代地中海世界の秘宝
THE GOLDEN LEGEND
国立西洋美術館
20151016-20160111
2015年11月7日(土) 晴 9時30分~10時30分頃
【総評】
土曜日の開館前に並びました。土曜日なので混んでいるかなと思ったのですが、並んでいたのは全部で20名程度。
中に入っても混んでくる事はなく、空いていました。梯子した三菱一号館「プラド美術館展」は混んでいましたが、対照的にこちらは空いていました。
普段は「ギリシア神話に関連する何か」を全て紹介していますが、この美術展ではギリシア神話関連の作品が多く、とりあえず今回のレポートでは絵画だけ紹介します。
ギリシア神話関連の絵画は12点。
01.ギュスターヴ・モロー 「ヘラクレスと青銅の蹄をもつ鹿」
02.ギュスターヴ・モロー 「アルゴー船の乗組員」
03.ギュスターヴ・モロー 「イアソン」
04.グスタフ・クリムト 「第1回ウィーン分離派展ポスター(検閲前)」(後期は検閲後)
05.エドワード・バーン=ジョーンズ 「黄金の雨『フラワー・ブック』より」
06.ニコラ・プッサン 「パクトロス川の源のミダス王」
07.ヒリス・ファン・コーニンクスロー 「「パリスの審判」が表された山岳風景」
08.エラスムス・クエリヌス 「金の羊毛を手にするイアソン」
09.ハーバート=ジェイムス・ドレイパー 「金の羊毛」
10.マルカントニオ・バッセッティ 「ダナエ」
11.ヒリス・ファン・コーニンクスロー 「「パリスの審判」が表された山岳風景」
12.ピエール=オーギュスト・ルノワール 「パリスの審判」
今回、どちらかというと金細工の装飾品がメインのように思われますが、実は絵画が結構凄いです。しかもそのほとんどがギリシア神話。
ギュスターヴ・モローさん「イアソン」は国立西洋美術館「ギュスターヴ・モロー」(1995年)と国立新美術館「オルセー美術館展」(2014年)に来ていて、ある意味「メインの作品」とも思えます。
この絵画の説明(柱に書かれている内容等)についてはこちらをご覧ください。
後、今回の図録に面白い事が書かれていました。イアソンの物語は「アルゴナウタイ(アルゴー船での冒険譚」の一部ですが、物語の発端となる「プリクソスとヘレーが黄金の羊に乗ってコルキスに向かう」物語にて、
ヘレーが美術で扱われるようになるのは、紀元前4世紀になってからである(p20抜粋)。
とありました。因みにヘレーはプリクソスの妹で、今のダーダネルス海峡で黄金の羊から落ちてしまいます(これに由来して当時、ダーダネルス海峡は「ヘレースポントス」と呼ばれていました)。
プリクソスとヘレーは物語に書かれていますので「1セット」のイメージがあり、寧ろ落下する所が印象に残っている(海峡の名前にもなっていますので)のですが、紀元前4世紀まで扱われなかったのは意外な気がしますね。何か理由があるんですかね…?少し気になります。
グスタフ・クリムトさん「第1回ウィーン分離派展ポスター」は府中市美術館「ウィーン、生活と美術 1873-1938」(2001年)に検閲後、Bunkamura ザ・ミュージアム「ウィーン分離派1898-1918」(2002年)に検閲前、松屋銀座「アール・ヌーヴォーのポスター芸術展 LIFE art nouveau」(2010年)に検閲後が来ています(まだ他にも来ていると思います)。
これだけ来ているという事はそれだけ人気があるという事だと思います。今回の美術展では前期(10/16~11/23)に検閲前、後期(11/25~1/11)に検閲後との事でしたので、前期に観に行きました(もう前期は終わっていますが……)。
ただ、どうせなら両方並べて欲しかったなぁ~と……。
ハーバート=ジェイムス・ドレイパーさん「金の羊毛」は東京藝術大学大学美術館「テイト・ブリテン発世界巡回展 ヴィクトリアン・ヌード 19世紀英国のモラルと芸術」(2003年)に来ていました。ただ、この時はポストカードになっておらず悔しい思いをした記憶が……。
ドレイパーさんの「写実的だけど透明感のある作風」はギリシア神話にマッチしていて、とても好きですので、個人的にはこの作品だけでも充分価値がありました。
ピエール=オーギュスト・ルノワールさん「パリスの審判」は三菱一号館美術館にありますので「三菱一号館美術館名品選2013 -近代への眼差し 印象派と世紀末美術-」(2013年)等で目にしてきましたが、貸し出しで観たのは初めてでした。
最近良く見る為か、個人的に「ルノワールのギリシア神話」というとこのイメージが定着しつつあります。
またこの他、タペストリーで、
フランドル製 「アタランテとヒッポメネス」
がありました(323.5×719.5cmと超ビッグ)。物語としては「アタランテとヒッポメネス」なのでしょうが、服装が作成された17世紀半ばの人がいて「妙な感覚」のある作品でした。
後、絵画ではないので書かないつもりでしたが「古代ギリシャコイン好き」としては「ダナケ」と呼ばれるコインについて少しだけ。
このダナケというのは私も今回初めて知ったのですが、図録によると、
ダナケは、墓で見つかるコインを意味する古い言葉のひとつだ。それらのコインは、古代ギリシャ人たちが墓に納めたもので、死者の魂を運ぶ渡し守カロンに払う手数料であり、また同時に高価な副葬品でもあったと考えられる(p109抜粋)。
との事です。所謂「カロンズオボル」と呼ばれるオボル硬貨の「冥銭」専用オボルのようです。
展示されていたのは、金で直径1.05cm、紀元前3世紀-紀元前1世紀、フクロウのデザインがされています。
図録に「アテナイのコインの裏面を、打ち出し技法によって刻印した」とあり、これは有名な「フクロウコイン」のデザインの事を指しています。
「アテナイのコインの裏面」と書かれていますが、通常フクロウコインの裏面は「フクロウ・AOE・オリーブ」がデザインされています。
このダナケはフクロウだけのデザインで、その代わりに少しデザインされた「縁取り」がされています。フクロウコインの裏面も縁取りがある場合がありますが、打ち出しによってあったりなかったりしますので、明らかに違う縁取りだと思います。
また、紀元前3世紀-紀元前1世紀ですとオボルのような小さな銀貨は作られなくなっている筈です(大きな銅貨に変わっている)ので、この小さなダナケはもしかすると「銀貨オボルの豪華(金の)復刻版」的なイメージがあったのかも……とか妄想が膨らみますね^^;
※ただ1cmを越えているのでオボルというよりかディオボル(2倍オボル)に近いような気もします。まぁ基準は重さですので関係ないといえば関係ないんですけどね。
ギリシア神話的には今年No1の美術展です。空いていますし、観に行って損はありません。あっ後、黄金も綺麗ですよ(あれっ何か逆のような……^^;)。
【購入グッズ】
図録 \2800
図録バッグセット \600
マグネット アルゴー船の乗組員 \500
金塊ストラップ \800
ポストカード
ギュスターヴ・モロー 「ヘラクレスと青銅の蹄をもつ鹿」 \120
ギュスターヴ・モロー 「アルゴー船の乗組員」 \120
ギュスターヴ・モロー 「イアソン」 \120
グスタフ・クリムト 「第1回ウィーン分離派展ポスター(検閲後)」 \120
エドワード・バーン=ジョーンズ 「黄金の雨『フラワー・ブック』より」 \120
ニコラ・プッサン 「パクトロス川の源のミダス王」 \120
ヒリス・ファン・コーニンクスロー 「「パリスの審判」が表された山岳風景」 \120
エラスムス・クエリヌス 「金の羊毛を手にするイアソン」 \120
ハーバート=ジェイムス・ドレイパー 「金の羊毛」 \120
マルカントニオ・バッセッティ 「ダナエ」 \120
グスタフ・クリムト 「人生は戦いなり(黄金の騎士)」 \120
首飾り 紀元前4世紀 \120
横たわるシレノスが表された飾り板 紀元前480年頃 \120
腕輪 紀元前675-紀元前650 \120
金製飾り板 紀元前630 \120
パナギュリシュテ遺宝/フィアレ 紀元前4世紀-紀元前3世紀 \120
パナギュリシュテ遺宝/女神をかたどったリュトン 紀元前4世紀-紀元前3世紀 \120
パナギュリシュテ遺宝/鹿をかたどったリュトン 紀元前4世紀-紀元前3世紀 \120
パテラ 紀元前7世紀第1四半期 \120
パテラ 紀元前675-紀元前650年 \120
ペンダント 紀元前6世紀-紀元前5世紀 \120
蛇の頭部のあるレベス 紀元前7世紀第1四半期 \120
螺旋状のディアデマ 紀元前4世紀末-紀元前3世紀初期 \120
動物模様のある留め金 紀元前7世紀第1四半期 \120
ポストカードは全24種。今回は全て購入しました。絵画は11種類ですが、その内、10種類がギリシア神話という大豊作。
しかもモロー、クリムト、バーン=ジョーンズ、ドレイパー、プッサンとギリシア神話の絵画では有名な方ばかり。
ポストカードも豊富で大満足の美術展だったのですが、唯一の不満点はその他のグッズが「今一つ」だった事。まぁあくまで「ギリシア神話のグッズでは」という事ですけどね。
ただ、マグネットはまさかのギュスターヴ・モローさん「アルゴー船の乗組員」……渋いですね。
ギリシア神話関連でマグネットになるとしたらドレイパーさん「金の羊毛」かなと思っていました(個人的な希望が入っていますけどね)。
※立体物のポストカードは著作権保護の為、載せておりません。
【ギリシア神話の絵画とポストカード】
ギュスターヴ・モロー 「ヘラクレスと青銅の蹄をもつ鹿」 ○
ギュスターヴ・モロー 「アルゴー船の乗組員」 ○
ギュスターヴ・モロー 「イアソン」 ○
グスタフ・クリムト 「第1回ウィーン分離派展ポスター(検閲後)」 ○
エドワード・バーン=ジョーンズ 「黄金の雨『フラワー・ブック』より」 ○
ニコラ・プッサン 「パクトロス川の源のミダス王」 ○
ヒリス・ファン・コーニンクスロー 「「パリスの審判」が表された山岳風景」 ○
エラスムス・クエリヌス 「金の羊毛を手にするイアソン」 ○
ハーバート=ジェイムス・ドレイパー 「金の羊毛」 ○
マルカントニオ・バッセッティ 「ダナエ」 ○
ヒリス・ファン・コーニンクスロー 「「パリスの審判」が表された山岳風景」 ×
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