プーシキン美術館展 フランス絵画300年
PUSHKIN MASTERPIECES OF FRENCH PAINTINGS FROM THE STATE PUSHKIN MUSEUM OF FINE ARTS,MOSCOW
20130706-20130916
常設展を開催しました。こちらからどうぞ。 [2013.9.14 up]
2013年7月6日(土) 曇 17時30分~19時30分頃
【総評】
「プーシキン美術館展 フランス絵画300年」の夜間特別観覧会に当選しました(抽選で100名。私の申し込み番号は137番でした)ので、そのレポートです。
※ここでの写真は夜間特別観覧会という事で美術館より特別な許可を得て写真撮影をしたものです。通常は写真撮影できませんので、ご了承の程、よろしくお願い致します(一応、こういった一文を入れるのが利用条件になっていますので、冒頭にて……^^;)。
まず最初に30分のミニレクチャーがありました。参加者は女性が7割ぐらいでした。
ミニレクチャーですが、まず最初に今回開催の経緯の説明がありました。2011年の震災・原発事故で開催が中止になりましたが、ロシアから作品が出発する4日前だったそうです。
「開催中止」から色々と交渉して今回の開催になったとの事。その為か、開催初日の10時には二百数十人の方が並んだそうです。
私も楽しみにしていたので、残念だった記憶があります(その時のレポート)。その後、スライドを使用してのレクチャーがありました。
ミニレクチャーが終わり会場に向かうと、数十名入った時点で一旦、入場が止められました。多分、3回に分けて入場させていたようです(100名でしたので約30名程度ずつっぽい)。
因みに入場証はこんな感じ。
今回、音声ガイドの無料貸し出しをしていましたので、借りてみました(生れて初めて!!)。
実は音声ガイドは余り好きではありません。何故かと言うと「その作品の前が混む」からです。ただ今回は人が少ないので「自分が邪魔になる」可能性は低いので、まぁ良いかなと……。
美術展の全体はこんな感じ。
さて、ギリシア神話関連ですが、7点ありました。
・フランソワ・ブーシェ 「ユピテルとカリスト」【下1段目左端】
・アンリ・ルソー 「詩人に霊感を与えるミューズ」【撮影不可】
・カルル・ヴァン・ロー 「ユノ」【下1段目真中】
・ジャック=ルイ・ダヴィッド 「ヘクトルの死を嘆くアンドロマケ」【下2段目左端】
・クロード・ロラン 「アポロとマルシュアスのいる風景」【下1段目右端】
・ナルシス・ディアズ・ド・ラ・ペーニャ 「クピドとプシュケ」【下2段目真中】
・ケル=グザヴィエ・ルーセル 「ケレスの勝利(田園の祭り、夏)」【下2段目右端】
何と言ってもメインはブーシェさん「ユピテルとカリスト」。思っていたより小さかったですが、とても綺麗でした。
「ロココはギリシア神話は多いけど、ケバケバ過ぎてちょっと……」と思っていましたが、この「ユピテルとカリスト」は全体のバランスが良い為か「軽薄さ」がなく「甘く、華やかで優美」といった感じでした。やっぱり本物を見ないと駄目ですね。
まぁ題材は何ですが……一応、岩波文庫 オウィディウス「変身物語(上)」から対応部分を抜粋すると、まず、カリストさんが疲れて休んでいるシーンです。
ここで、肩から矢筒をはずし、しなやかな弓の弦(つる)を弛(ゆる)めると、草におおわれた地面に横たわって、色うつくしい矢筒に頭を乗せた(p71抜粋)。
とあります。ブーシェさんの絵を見ると左下に「赤い綺麗な矢筒」があります。恐らくこれが「色うつくしい矢筒に頭を乗せた」の矢筒だと思われます。この矢筒に頭を乗せて休んでいたんですね。図録を見ると、
主題はブーシェが愛したオウィディウス『変身譚』による(p42抜粋)。
とありますので、この文章を忠実に再現したように思えます。赤い矢筒なんて、珍しいですから(日本にも「朱色」の矢筒があったような気はしますが……)。
因みにカリストさんはアルカディア出身で、
マイナロスの山に足を踏みいれるどんな妖精(ニンフ)も、彼女ほど、この女神に可愛がられてはいなかった(p71抜粋)。
とあります。この「マイナロスの山」ですが、最初は山名だと思っていたのですが、パウサニアス「ギリシア記」では地方名として書かれ、近くにマイナリオン山がありました。
多分、この山の事だと思いますが、ディオドロス「神代地誌」にはそのまま「マイナロス山」として山名になっていました。ディオドロスの方がパウサニアスより古いですので「マイナロス山→マイナリオン山」と山名が変わったようです。
ここに大神ゼウス(ユピテル)がやってきます。
彼女が疲れきっていて、見張り番もいないのをみてとったユピテルは、「またとない機会だ。この浮気には妻の目もとどかないだろう」とひとりごちた。「いや、もし見つかったとしても、この女のためなら、夫婦喧嘩もやり甲斐があろうというものだ」(p71抜粋)
はっきり「浮気」って仰っておられますね、大神さまは……ホメロス著「イリアス」や「オデュッセイア」にあるようにギリシア神話の神様は自由に姿を変えられますので、
ただちに、顔と服装を変えてディアナ女神になりすまし、このようにいう。「娘さん、わたしのお供(とも)のひとりのようね。どの峰で狩りをしていたの?」
乙女は、草原から身を起こして、「女神さま、ようこそ! わたしから見れば、あなたはユピテルさまよりも偉大でいらっしゃいます--いいえ、当のご本人に聞こえてもいいのです」などという(p71,p72抜粋)。
ちょうどこの辺を描いたものと思います。この後は……ご想像の通りです^^;
で、物語的にはこの後が悲惨です。この「甘く、華やかで優美」な絵画からはかけ離れます。概要的には、
①アルテミス(ディアナ)に妊娠を気づかれ、追放
②ゼウス(ユピテル)の正妻ヘラ(ユノ)に姿を熊に変えられる(心は変わらず)
③成長した息子に(熊なので)殺されそうな所をゼウスに救われ息子と共に星座に(大熊座と小熊座)
④浮気相手が天上で輝いているのが気に入らないヘラ(ユノ)が海に浸からないように画策
→結果、北極星の回りを海に浸からず回り続ける
踏んだり蹴ったりです。そしてこの①の場面を描いたのではないか、というのが有名なフェルメールさん「ディアナとニンフたち」。
物語についてはこちらにもう少し詳細に書いていますので、ご興味があればご覧下さい。
因みにフェルメールさん「ディアナとニンフたち」は2008年・東京都美術館「フェルメール展」と2012年に同じく東京都美術館の「マウリッツハイス美術館展」に来ています。
ギリシア神話以外も少し撮影しました。
因みに一番混んでいたのはブーシェさん「ユピテルとカリスト」だと思います。私はギリシア神話がメインですので、空いている時を狙っていたのですが、中々人が退きません。
メインと思われたルノワールさん「ジャンヌ・サマリーの肖像」は意外と人が少なかったです(たまたまかもしれませんが)。
アングルさん「聖杯の前の聖母」も結構空いていました(こちらもたまたま?)。
この美術展でギリシア神話以外で良いなぁと思ったのがゴーギャンさんのこの作品。
題名は「エイアハ・オヒパ」、日本語では「働くなかれ」との事……はい。^^;
なお、最後の第4章「20世紀 -フォーヴィスム、キュビスム、エコール・ド・パリ」は撮影禁止でした。ここにアンリ・ルソーさん「詩人に霊感を与えるミューズ」があったのでちょっと残念。
美術展を観終わってミュージアムショップへ。
美術展とは関係のないグッズが結構販売されていました。美術展は良かっただけに、個人的にはオリジナルグッズで埋めて欲しかったなと……。
なお、特別観覧会ですので半券はいただけませんでした(ですので、イメージはなしです)。
↓おまけ写真
【購入グッズ】
図録 \2000
ポストカード
フランソワ・ブーシェ 「ユピテルとカリスト」 \150
アンリ・ルソー 「詩人に霊感を与えるミューズ」 \150
ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングル 「聖杯の前の聖母」 \150
ピエール=オーギュスト・ルノワール 「ジャンヌ・サマリーの肖像」 \150
フランソワ・ルモワーヌ 「素描の寓意」 \150
ポール・ゴーギャン 「エイアハ・オヒパ(働くなかれ)」 \150
ダブルクリアファイル \500
レシートには展覧会名があり、中々良い感じです。ただ、ポストカード入れは普通の物でした。ちょっと残念。
クレジットカードは1万円以上で利用可能との事。
図録は\2000と安くて良いのですが、オリジナルグッズは少なかったです。ポストカードの種類もちょっと少ないですかね……カルル・ヴァン・ローさん「ユノ」は欲しかったです。
【ギリシア神話の絵画とポストカード】
No | 作者名 | 作品名 | ポストカード |
1 |
フランソワ・ブーシェ |
ユピテルとカリスト |
○ |
2 |
アンリ・ルソー |
詩人に霊感を与えるミューズ |
○ |
3 |
カルル・ヴァン・ロー |
ユノ |
× |
4 |
ジャック=ルイ・ダヴィッド |
ヘクトルの死を嘆くアンドロマケ |
× |
5 |
クロード・ロラン |
アポロとマルシュアスのいる風景 |
× |
6 |
ナルシス・ディアズ・ド・ラ・ペーニャ |
クピドとプシュケ |
× |
7 |
ケル=グザヴィエ・ルーセル |
ケレスの勝利(田園の祭り、夏) |
× |