メトロポリタン美術館展 大地、海、空 ― 4000年の美への旅
Earth,Sea,and Sky:Nature in Western Art; Masterpieces from The Metropolitan Museum of Art
20121103-20130127
常設展を開催しました。こちらからどうぞ。 [2013.4.20 up]
2012年11月23日(金) 雨時々曇 11時15分~12時00分頃
【総評】
3連休の初日でしたが、天気が悪く冷え込んだ為に多少は空いているかなと思いましたが、甘かったです。激混みでした。
関係ない話ですが、傘置き場が一杯で、ついチケットもぎりの所まで傘を持って行ってしまいましたが、チケットもぎりの所にもそういった人用の傘立てがありました。
美術展に入ってすぐは混むので、入ってすぐギリシア神話関連があるのは……と前回記述しましたが、今回も「ほぼ入ってすぐ」にギリシア神話関連がありました……まぁそもそも混雑していたので、どこにあっても混んでいたとは思います。
ギリシア神話関連ですが、以下の6点がありました。
・レンブラント・ファン・レイン 「フローラ」
・ニコラ・プッサン 「パクトロス川の源で身を清めるミダス王」
・ヤン・ブリューゲル(子) 「冥界のアエネアスとシビュラ」
・『アエネイス』の画家 「イタリアに近づくアエネアスの船団を描いた飾り板」
・シュトゥットガルト・グループに帰属 「凱旋車に乗ったエオスを描いたレカニス」
・作者不明「ライオンの頭の兜(ヘラクレスに退治されたネメアのライオン)」
今回のギリシア神話関連は、美術展的にはレンブラントさん「フローラ」がメインだと思われますが、個人的(行く前)にはプッサンさん「パクトロス川の源で身を清めるミダス王」でした。しかし、観た後の個人的メインはブリューゲル(子)さん「冥界のアエネアスとシビュラ」でした。
ブリューゲル(子)さん「冥界のアエネアスとシビュラ」はとても小さな作品でしたが、冥界の「魔物(使徒?)」が沢山描かれていて、好みでした。ほぼ中央に「黄金の枝(私は読んでいませんが「金枝篇」はこの枝にまつわる物語らしいです)」を左手に、剣を右手に持つアエネアスがいます。そして少し後に巫女シビュラが続いています。
英雄が巫女を先導するという構図は妥当なような気がしますが物語的には「巫女シビュラの少し後にアエネアス」のような気がしました。岩波文庫・ウェルギリウス著「アエネーイス(上)」の第六巻を見てみると、
洞に巫女はおどり入る。怖(お)じる色なくアエネーアース、しっかり進んで案内の、巫女と足なみ揃え入る(p369抜粋)。
とありました。これだけ見ると「ほぼ並んで」という印象です。その後は、
見るなりぞっとアエネーアース、矢庭に剣をとりなおし、裸の切っ先(さき)つきつける。このときもしも、わけを知る、案内(あない)の巫女が英雄に、このものどもは実際の(p371抜粋)、
アエネーアース、巫女と共ども道程を、進めて河に近づけば(p379抜粋)、
といった感じですので、どちらかというと「ちょっと巫女の方が先に歩いている」印象がありました。英雄とはいえ冥界を歩くのは案内する巫女の方が適していそう、と思っていたので……まぁ構図的には英雄が先導した方がさまになりますね。
この絵画とは関係ないですけど、この第六巻には有名な諺があるそうです。原詩では127行らしいのですが、岩波文庫・ウェルギリウス著「アエネーイス(上)」では「するは一つの大事業、それは一つの大難事」と訳されています。角川文庫・トマス・ブルフィンチ著「ギリシア・ローマ神話」では「これぞ苦業、これぞ至難の業(わざ)なり」となっています。
ウェルギリウスと対極にいるオウィディウスは自身の破滅の原因となった「恋愛指南-アルス・アマトリア-」の訳注には、
「これぞ難業、ここが苦心のしどころというものだ」Hoc opus, hic labor est, という句はウェルギリウス『アエネイス』第六巻百二十七行の詩句をそのまま用い、荘重な叙事詩の調子を、恋のかけひきなどという浮ついたことに適用して、滑稽味を出したもの。ローマ人ならこの一句を読んで噴き出すか、にやりとしたはずである(p160抜粋)。
と書いてありました。因みにこの訳注の元の文は「~先に贈り物をしたりはせずに、女といい仲になること、これぞ難業、ここが苦心のしどころというものだ」です……。
プッサンさん「パクトロス川の源で身を清めるミダス王」はレンブラントさん「フローラ」と並んで展示されていました。「川」とありますが「川」やミダス王より目立っているのが中央の冠を戴く男性です。図録を見る前はこの物語に出てくるディオニュソスかシレノスかな、と思っていたのですが、図録を見ると、
ニコラ・プッサンによる本作においては、中央左でミダス王が体を洗い、パクトロス川の擬人像である横たわる大柄な川の神が前景を占める(p209抜粋)。
とありました。擬人像でしたか……この辺は解説を見ないと分からないですね。
プリギュア王ミダスの「触ると金になる(ミダス・タッチ)」は有名ですが、プリギュアは実際に金が採れたようです。神話的には「ミダス王がパクトロス川の源で身を清めた後にパクトロス川で砂金が取れるようになった」となっていますが、東京書籍・ジョン・キャンプ、エリザベス・フィッシャー著「図説 古代ギリシア」を見てみると、
考古学の発掘調査により、硬貨を発明したのはリュディア人だとするギリシアの伝承の確証が得られそうだ。リュディアの首都サルディスを流れるパクトロス川が、トモロス山から大量の琥珀金を運んできたというのだ。琥珀金は銀と金から自然にできる合金である(p107抜粋)。
とありました。最近、古代ギリシャコインに興味を持っていますが、この琥珀金はエレクトラムと呼ばれる天然合金で、最古のコイン(紀元前600年代らしいです)に使用された物との事です(私的な話ですが、海外オークションで落とした「ケルベロス」のコインはBC500ぐらいでこのエレクトラムのコインです。お気に入り)。
因みに「トモロス山」はアポロン様vsパーンの音楽対決の審判をしています。改心したミダス王はパーンを支持した為、この後、更に有名な「王様の耳はロバの耳」になります(更に因みにですが、ミダス王はプリギュア帽子でロバの耳を隠しますが、この間落としたアッティス様のコインではアッティス様がこのプリギュア帽子を被っていました。まぁプリギュアの神なので、不思議はないのですが、何か色々とつながりますね……)。
『アエネイス』の画家「イタリアに近づくアエネアスの船団を描いた飾り板」は宗教画のようで、ちょっと好みではなかったのですが、図録を見ると、
本作の場面は、このラテン詩人の名高い物語の第3巻を典拠とする。ここに描かれているのは、シチリアとイタリアの間にある危険なメッシーナ海峡を器用に航海するアエネアスの父、アンキセスだ(p213抜粋)。
アンキセスがメインなんですね……再度、岩波文庫・ウェルギリウス著「アエネーイス(上)」の第三巻を見てみると、
このとき父のアンキーセス、「かのカリュブディスはまさにこれ。まさにわれらのヘレノスが、予言していた懸崖ぞ、かの怖るべき岩角ぞ。急ぎ逃れよおお仲間、踊りかかって一斉に、力をこめて櫂を漕げ」(p189抜粋)。
とありました。恐らくこの場面なのでしょうけど、この板、どれがアンキセスか分からないんですよね……。
個人的にはヤン・ブリューゲル(子)「冥界のアエネアスとシビュラ」が観れて満足でした。ただ、予想よりギリシア神話関連が少なく後述の通りグッズも少なかったので、ちょっと残念感がありました。
【購入グッズ】
図録 \2400
ポストカード
レンブラント・ファン・レイン 「フローラ」 \150
フィンセント・ファン・ゴッホ 「糸杉」 \150
アンリ・ルソー 「ピエーヴル川の堤、ビセートル付近」 \150
根付 レンブラント・ファン・レイン 「フローラ」 \525
クレジットカードは1万円以上で使用可能との事(因みに常設のミュージアムショップは千円以上で利用可能との事でした)。
図録は「糸杉Ver」と「ポンポンVer」の2種類がありました。当然「ポンポンVer」を購入。水色で可愛いです。パッと見た目は「ポンポンVer」の方が売れていたように思えました。
すると何故か坂本龍一のCDを入れられました。すっかり忘れていたのですが展覧会HPに「本展会場で展覧会公式カタログを購入すると、本曲を収録したプレミアムCDがついてくるという、史上初のスペシャル企画が実現(数量限定、非売品)」とありました。う~ん、個人的には微妙……。
また、特設ミュージアムで売っていないメトロポリタン美術館展用のグッズが、常設のミュージアムショップで売っていました。但し、美術展名などが入っていません。「メトロポリタン美術館展の期間だけ販売」と書いてありましたので「メトロポリタン美術館の名前(使用料)を使わない分、安く売ろう」というようなグッズなのかな、と思いました。
リニューアルした東京都美術館、グッズには力を入れない方針なのかな……ポストカード、クリアファイル共に種類が少なく、額絵などもありませんでした(マグネットは売っていましたが)。
レシートには美術館名が入っていましたが、ポストカード入れは無地でした。
【ギリシア神話の絵画とポストカード】
No | 画家名 | 作品名 | ポストカード |
1 |
レンブラント・ファン・レイン |
フローラ |
○ |
2 |
ニコラ・プッサン |
パクトロス川の源で身を清めるミダス王 |
× |
3 | ヤン・ブリューゲル(子) | 冥界のアエネアスとシビュラ | × |
4 | 『アエネイス』の画家 | イタリアに近づくアエネアスの船団を描いた飾り板 | × |
5 | シュトゥットガルト・グループに帰属 | 凱旋車に乗ったエオスを描いたレカニス | × |
6 | 作者不明 | ライオンの頭の兜(ヘラクレスに退治されたネメアのライオン) | × |