リヒテンシュタイン 華麗なる侯爵家の秘宝

Masterworks from the Collections of the Prince of Liechtenstein

国立新美術館

20121003-20121223

 

常設展を開催しました。こちらからどうぞ。 [2013.3.30 up]

2012年10月20日(土) 晴 10時00分~11時10分頃


【総評】

 

 秋晴れの土曜日、開館時間に近いとはいえ前評判が良いので激混みかなと思いましたが、そこまで混んでいませんでした。程好い混み方といった感じでした。

 

 ギリシア神話関連ですが、絵画は以下の16点がありました。


マルカントニオ・フランチェスキーニ 「アドニスの死」

マルカントニオ・フランチェスキーニ 「死せるアドニスの変身」

マルカントニオ・フランチェスキーニ 「アポロンとディアナの誕生」

マルカントニオ・フランチェスキーニ 「大蛇ピュトンを殺すアポロンとディアナ」

アブラハム・ブルマールト 「メルクリウスとアルゴスとイオ」

ガロファロ(本名ベンヴェヌート・ティージ) 「ヘラクレスの神格化」

ハンス・フォン・アーヘン 「狩の後で休息するディアナとニンフたち」

フランチェスコ・マジョット 「バッカスとアリアドネ」

ペーテル・パウル・ルーベンス 「果物籠を持つサテュロスと召使いの娘」

ペーテル・パウル・ルーベンス 「マルスとレア・シルヴィア」

ペーテル・パウル・ルーベンス 「メレアグロスとアタランテ、あるいはカリュドンの森(下絵)」

ペーテル・パウル・ルーベンス 「ディアナの狩り(下絵)」

レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン 「キューピッドとしゃぼん玉」

アレッサンドロ・マニャスコ 「古代の廃墟の奇想とバッカス祭」

ポンペオ・ジロラモ・バトーニ 「分かれ道のヘラクレス」

エリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブラン 「虹の女神イリスとしてのカロリーネ・リヒテンシュタイン侯爵夫人(旧姓マンデルシャイト女伯)」


 また、彫像などは、以下の10点がありました。

 

ジャコモ・アントニオ・ポンゾネッリ 「マルスの胸像」 (大理石像)

マッシミリアーノ・ソルダーニ=ベンツィ 「踊るファウヌス」 (ブロンズ像)

マッシミリアーノ・ソルダーニ=ベンツィ 「メディチ家のヴィーナス」 (ブロンズ像)

アンドレア・マンテーニャ 「マルシュアス、または聖セバスティアヌス」 (ブロンズ像)

ヨアヒム・フリース 「ぜんまい仕掛けの器(牝鹿に乗るディアナ)」

マティアス・ラウフミラー 「豪華なジョッキ」 (サビニの女たちの略奪)

ヨハン・アンドレアス・テーロト 「万年暦」 (アイネイアース)

作者不詳 「コンソール・テーブル」 (サテュロス)

作者不詳 「コンソール・テーブル」 (サテュロス)

作者不詳 「キャビネット」 (アイネイアース)


 展示室に入るといきなりブロンズの「メディチ家のヴィーナス」が出迎えてくれます。ついふらふらと近づいてしまい「少し下がって下さい」と係りの人に注意されてしまいました。ちょっと下に書かれている線が見辛かったんですけどね……(言い訳)。

 

 そして、すぐその後にギリシア神話4連作が。美術には疎いので作者のフランチェスキーニさんという方は知らなかったのですが、これが中々良いです。特に「アポロンとディアナの誕生」は今まで余り見た事のない題材で、しかも赤子の2柱は既に「月」と「後光」というアトリビュートが付いています。赤子とはいえ流石、神……。

 

 赤子の2柱の横には母親のレト(ラトナ)神、更に右上を見るとこの赤子の父親・ゼウス大神の正妻、ヘラ(ユノ)様がおられます。図録には、

 

 上空には、シンボルであるクジャクに付き従われ、高く上げた腕でラトナを脅すユノの姿が見える(p143抜粋)。

 

 と書かれているのですが、パッと見た時、人差し指ではなく中指を付き立て「ファック・ユー!!」しているのかと思いました……。

 

 いきなりギリシア神話の良い絵画があるのは良いのですが、展示室の最初というのは大抵、混みます。なので、一番最初にギリシア神話関連が来るのは実は余り好きではないのですが、今回はそう混んでいなかったのでラッキーでした。

 

 「バッカスとアリアドネ」は良く有る題材なのですが、今回のマジョットさんのは綺麗で興味深かったです。アリアドネに冠を被せようとしているのはアフロディーテのように見えます。エロスが近くにおり、アトリビュートの白い鳩がいます。この題材にアフロディーテが描かれているのは余り見た事がないように思います。更に前面に矢のつまった箙があります。エロスの物ではないようなので狩り用と思えますが、何故わざわざ箙が描かれているのかな、とちょっと不思議に思いました。

 

 「果物籠を持つサテュロスと召使いの娘」は今回のメインだと思っていた作品です。結構有名な作品だと思いますが「何でわざわざサテュロスを主題に書いたのだろう」とちょっと不思議に思っていました。図録を見ると、

 

 作品の着想は、カラヴァッジョへのユーモア溢れるオマージュとして理解される。本作品に向き合う鑑賞者は、オマージュというには遥かに複雑なプロセスを経て、カラヴァッジョの≪果物籠を持った少年≫(1593/94年、ローマ、ボルゲーゼ美術館蔵)を想起することになる(p84抜粋)。

 

 とありました。なるほど、少年からサテュロスへ置き換えたんですね。しかし何でやっぱりサテュロスなんでしょう……。

 

 「マルスとレア・シルヴィア」は大きく迫力があります(道徳的にはどうかと思うシーンですけど)。これはギリシア神話ではなくローマ神話になりますが、図録には、

 

 古代神話によると、軍神マルスはかまどの女神ヴェスタに仕える女祭司レア・シルヴィアに心を奪われた。ローマ時代の詩人オウィディウス(前43-後17)は、マルスが眠りに落ちたヴェスタを陵辱(りょうじょく)したと伝えている(p86抜粋)。

 

 とありました。早速、オウィディウス著「祭暦」の第三巻、マルス月 を見てみると、

 

 この姿をマルス神が目にします。目のしたものを欲し、欲したものは手に入れます。ですが、神の力で御自分の密事をなかったことのようにしてしまいました。眠りは去りますが、彼女の体はまだ重たげに横たわっています。それもそのはず、すでに胎内にはローマの都の創健者(ロムルス)がいたのですから(p98抜粋)。

 

 とありました。最近、ギリシア神話を読んでいなかったのですっかり忘れていましたが、レアさん、ローマの「元」でしたね……。後、余り関係ないのですが、このマルス、剣を右の腰に差しています。通常、右利きの場合は右手で抜き易いように「左」の腰に剣を差します。他の絵画でも大抵は「左」になっています。とすると、マルスは左利きだったのかなと思いましたが、これは単に「構図」の問題なんでしょうね。

 

 「ヘラクレスの神格化」は「登場人物当て」を楽しんだのですが、図録に間違いがある事を見つけました。予想では右上から左回りに、

 

 ゼウス(ユピテル)→ヘラ→ヘルメス(メルクリウス)→ヘラクレス→イリス→ピロクテテス→エロス→アケロオス→ニンフ

 

 と思っていました。図録を見ると「イリス」ではなく「ファーマ(名声の女神)」、「アケローオス」ではなく「ネプチューン」、ここまでの違いは良いのですが、図録には、

 

 ユピテルの馬車では、メルクリウスとミネルヴァが歓迎の意を表している。ミネルヴァは、のちにヘラクレスを息子とし、ヘベを妻として与えることになる(p61抜粋)。

 

 とありました。う~ん、流石にミネルヴァ様がヘラクレスを息子にとったという話は見た事がありません。これは恐らくヘラ(ユノ)の間違いだと思います(99.99%)。青春の女神ヘベ様はゼウス大神とヘラ様の(珍しくまともな)娘ですので、妻に与えるにしてもヘラ様からでないと辻褄が合わないですし。図録でも間違いはある物なんですね。

 

 また、ギリシア神話ではないと思いますが、ちょっと絡んでいそうだったのが、バロック・サロンの天井画の4点、

 

アントニオ・ベルッチ  「占星術の寓意」「彫刻の寓意」「絵画の寓意」「音楽の寓意」

 

 です。あんまり上を見上げていると首が痛くなりますね……。

 

 予想以上にギリシア神話関連が多く、楽しめました。混雑度もそれほどでもなかったですし。ただ、以下で記述するようにグッズがちょっと少なかったです(大エルミタージュ美術館展は充実していましたが、実は大量に在庫が出て、今回は少なめに、とか…?)。

 グッズを除けば、美術展としては満足度は高いと思います。

【購入グッズ】


図録 \2500

 

ポストカード

 マルカントニオ・フランチェスキーニ 「死せるアドニスの変身」 \100

 ペーテル・パウル・ルーベンス 「果物籠を持つサテュロスと召使いの娘」 \100

 ペーテル・パウル・ルーベンス 「マルスとレア・シルヴィア」 \100

 レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン 「キューピッドとしゃぼん玉」 \100

 エリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブラン 「虹の女神イリスとしてのカロリーネ・リヒテンシュタイン侯爵夫人(旧姓マンデルシャイト女伯)」 \100

 マッシミリアーノ・ソルダーニ=ベンツィ 「メディチ家のヴィーナス」 \100

 ヨアヒム・フリース 「ぜんまい仕掛けの器(牝鹿に乗るディアナ)」 \100

 アンドレア・マンテーニャ 「マルシュアス、または聖セバスティアヌス」 \100


ストラップ

 レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン 「キューピッドとしゃぼん玉」 \800

 エリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブラン 「虹の女神イリスとしてのカロリーネ・リヒテンシュタイン侯爵夫人(旧姓マンデルシャイト女伯)」 \800


ブックマーク

 エリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブラン 「虹の女神イリスとしてのカロリーネ・リヒテンシュタイン侯爵夫人(旧姓マンデルシャイト女伯)」 \250

 

ダブルファイル \600

 

A5ミニファイル

 エリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブラン 「虹の女神イリスとしてのカロリーネ・リヒテンシュタイン侯爵夫人(旧姓マンデルシャイト女伯)」 \280

 ポストカード入れ、格好良いです。これだけ貰っても充分、お土産には良いような気がします。もしかすると中サイズの袋もあったかもしれません。

 内側はバロック・サロンの天井画が描かれています。

 ストラップ、裏面が違っていてお洒落なのですが、ちょっと高いです……。

 レシート、ポストカード入れと同じくロゴが格好良いです。レシートがオリジナルだと「力が入っているなぁ」と思います。

 ギリシア神話関連は常設展で展示予定です。なお、立体物は著作権の関係で掲載していません。

クレジットカードは利用可能です。


 ギリシア神話の絵画は多かったですが、ポストカードになっている物は少なかったです(ポストカード自体は30点販売されていました)。ちょっと残念。グッズの種類も余り多くなかったです。ギリシア神話ではないですが、例えばリヒテンシュタインの紋章やマークの入ったナイロン製バッグとかあれば、格好良いので、結構買う人はいたと思いますが……。

【ギリシア神話の絵画とポストカード】

No 作者名 作品名 ポストカード
1 マルカントニオ・フランチェスキーニ
アドニスの死
×
2 マルカントニオ・フランチェスキーニ
死せるアドニスの変身

3 マルカントニオ・フランチェスキーニ アポロンとディアナの誕生  ×
4 マルカントニオ・フランチェスキーニ 大蛇ピュトンを殺すアポロンとディアナ  ×
5 アブラハム・ブルマールト メルクリウスとアルゴスとイオ  ×
6 ガロファロ(本名ベンヴェヌート・ティージ) ヘラクレスの神格化  ×
7 ハンス・フォン・アーヘン 狩の後で休息するディアナとニンフたち  ×
8 フランチェスコ・マジョット バッカスとアリアドネ  ×
9 ペーテル・パウル・ルーベンス 果物籠を持つサテュロスと召使いの娘  ○
10 ペーテル・パウル・ルーベンス マルスとレア・シルヴィア  ○
11 ペーテル・パウル・ルーベンス メレアグロスとアタランテ、あるいはカリュドンの森(下絵)  ×
12 ペーテル・パウル・ルーベンス ディアナの狩り(下絵)  ×
13 レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン キューピッドとしゃぼん玉  ○
14 アレッサンドロ・マニャスコ 古代の廃墟の奇想とバッカス祭  ×
15 ポンペオ・ジロラモ・バトーニ 分かれ道のヘラクレス  ×
16 エリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブラン 虹の女神イリスとしてのカロリーネ・リヒテンシュタイン侯爵夫人(旧姓マンデルシャイト女伯)  ○
17 ジャコモ・アントニオ・ポンゾネッリ マルスの胸像 × 
18 マッシミリアーノ・ソルダーニ=ベンツィ 踊るファウヌス  ×
19 マッシミリアーノ・ソルダーニ=ベンツィ メディチ家のヴィーナス  ○
20 ヨアヒム・フリース ぜんまい仕掛けの器(牝鹿に乗るディアナ)  ○
21 アンドレア・マンテーニャ マルシュアス、または聖セバスティアヌス  ○
22 マティアス・ラウフミラー 豪華なジョッキ  ×
23 ヨハン・アンドレアス・テーロト 万年暦  ×
24 作者不詳 コンソール・テーブル  ×
25 作者不詳 コンソール・テーブル  ×
26 作者不詳 キャビネット  ○