古代ギリシャコインその2
2012年09月01日(土)~
ギリシア神話でコインというと冥府に行く際にカローンに渡す「オボロス」が有名ですが、コインの世界では「オボル(obol)」と呼ばれています(恐らくオボルの複数形でオボロスなのかな、と思っています)。
ギリシア神話を知っている方ですとオボロス(オボル)は有名だと思いますが、購入しようと探してみると、意外と販売されていませんでした。
どうやらコインの世界だと大きい方が価値があり、ドラクマ(古代ギリシャの基本的な単位。6オボルに相当)より小さい「オボルの単位のコイン」は専門のコイン店でも相手にされず、入荷していないとの事でした。
余り気乗りではなかった(様に見えました)専門のコイン店に、直接話したり、メールでお願いして、ようやく手に入れたのが、このオボルのコインです。
項目 | データ |
場 所 |
アッテイカ アテネ |
表 面 |
アテナ神 |
裏 面 | フクロウ |
年 代 | BC454-404 |
単 位 | オボル |
材 質 | 銀 |
サイズ | 10mm |
重 量 | 0.68g |
状 態 | VF |
金 額 | \--- |
購入日 | 2012/04/29 |
No:000T_0001
小さいです。「小銀貨」という事は知っていましたが、ここまで小さいとは思っていませんでした。フェリックス・ギラン著「ギリシア神話」に、
アケローン河を渡るには、冥界公認の渡し守カローン老人に頼まねばならなかった。彼は、因業(いんごう)な老人で、あつかいにくかった。もし、新参の死者の亡霊が、船に乗る前、カローン老に小銀貨(オボロス)を贈らなければ、彼は、この地方のしきたりを知らない他所(よそ)者を、情容赦なく追い返してしまった。すると、その亡霊は、荒れ果てた岸辺をさまよい、どこにも隠れ家を見つけることができないはめになった。それゆえ、ギリシア人は、気をつけて、死者の口に小銀貨を入れてやったものであった(p250抜粋)。
とありました。小銀貨(オボロス)、本当に「小」だったんですね……。
No:000T_0002
1円玉(20mm)と比較すると「小ささ」そして「精緻さ」が良く分かります。
この写真では良く見えませんが、アテナ神のヘルメットには小さな「彫り」が沢山刻まれています(恐らく0.1mm単位)。裏の梟の体には「点々」が沢山付いていて、目の周りにも放射状の「彫り」があります。
確かに大きなコインの方が価値はあるのでしょうが、私はこの小さなコインの方が芸術性は高いと思っています。もうほとんど美術品ですよね……2000年以上前の物とは思えないです。
ただ、とても残念なのは裏の刻印、本来は「AOE」なのですが「E」がほとんど切れてしまっています。更に「トーン」と言われる「煤けた」色がほとんどありませんので、恐らく「クリーニング」されてしまっているように思えます。
とはいえ、ここまで状態の良い物は中々ないように思います。そして苦労して一番最初に手に入れた「オボル」ですので、とても気に入っています。
因みにその後、専門のコイン店でも「オボル系」のコインを仕入れ始めて頂けました。販売したら、意外と売れるとの事です^^; (更に因みにですが、良く売れるのはヘミドラクマ(3オボル相当)の「振り返るライオン」というコインだそうです。ギリシア神話ではないので私は購入しませんが、確かにいいデザインだと思います)