2010年ギリシア神話の絵画ベスト3

 今年も「ギリシア神話がありそうな美術展」を巡って、数多くのギリシア神話の絵画や彫刻等を観てきました。という事で「2010年のギリシア神話の絵画 勝手にベスト3」を選んでみたいと思います。あくまで主観で選んでいますので、ご了承の程を。

 

 因みに2010年に観たギリシア神話の絵画は71点、その内ポストカードは23点でした。この他、観に行くことは出来ませんでしたが、入手したポストカードが2点ありました(アンドレ・ボーシャン展)。

No1

オルフェウス

Orpheus

ギュスターヴ・モロー

油彩、板、154.0×99.5cm(huile sur bois 154.0×99.5cm)

1865年(1865)

オルセー美術館(Musee d'Orsay)

 

オルセー美術館展2010 「ポスト印象派」

Post-impressionnisme 115 chefs-d'oeuvre de la collection du Musee d'Orsay

国立新美術館

20100526-20100816

 何といっても2010年のNo1はモローさんの「オルフェウス」です。綺麗さ、創造性、迫力、物語性、知名度、どれをとってもダントツのNo1だと思います。

 

 オルフェウスはトラーキア地方の竪琴の名手。イアソンを中心とした有名なアルゴー探検にも参加しています。オルフェウスにはエウリュディケという奥さんがいましたが、毒蛇にかまれて亡くなってしまいます。この為、冥界にまで奥さんを取り返しに行き、得意の竪琴で取り返せそうでしたが、あと少しのところで失敗。

 

 以降、失意のオルフェウスは女性嫌いになり、言い寄る女性たちを避けていましたが、その女性たちにバラバラにされて殺されてしまいます。カタログには、

 

 モローは、このオルフェウスの物語を取り上げるにあたり、流れ着いた首と竪琴を若い女性が拾い上げるという、新たなエピソードを創作した(カタログp172抜粋)。

 

 とあります。この「若い女性」というのは殺したトラーキアの女性だと思います。また、右下に亀がいますが、この亀は多分、音楽を表していると思います。竪琴は神ヘルメースが生まれたその日に亀から発明し、その竪琴は芸術を司る神アポロン(オルフェウスの父と言われる)に譲られています。この為、音楽(竪琴)を表している物と考えられます。

 

No2

アタランテとヒッポメネス

Atalanta e Ippomene

グイド・レーニ

油彩、カンヴァス、192×264cm(Oil on canvas 192×264cm)

1622年頃(c.1622)

カポディモンテ美術館(Museo Di Capodimonte)

 

ナポリ・宮廷と美―カポディモンテ美術館展 ルネサンスからバロックまで

NAPOLI,LA BELLEZZA E LA CORTE CAPOLAVORI DEL MUSEO DI CAPODIMONTE DAL RINASCIMENTO AL BAROCCO

国立西洋美術館

20100626-20100926

 2010年のNo2はレーニさんの「アタランテとヒッポメネス」です。大きくて迫力があり、物語性や知名度もあるのですが、ちょっと躍動感がなかったように思います。充分大きな絵画ですが、プラド美術館には更に大きいのがあるとの事です。完成度はカポディモンテ美術館の方が高いとの事ですが、プラド美術館のも観てみたいですね。

 

 アタランテは美人快速アスリートで言い寄る男性が多くいましたが「競争に勝てれば結婚、負ければ死」という条件で負け知らず、言い寄る男性は殺されていました。

 この死を賭けた競争に女神アフロディテ(ヴィーナス)の加護を得たヒッポメネス(メラニオンという名前の時もあります)が挑戦します。ヒッポメネスはアフロディテから黄金の林檎を3つ貰い、走りながら抜かれそうになると林檎を投げ、アタランテの気を惹きました。カタログには、

 

 本作に描かれるのは2個目のリンゴを投げた瞬間だ。すでに左手にリンゴを一つ持つアタランテは、もう一つを取ろうと立ち止まる。3個目はおそらくヒッポメネスの背中に隠した手に握られている(カタログp92抜粋)。

 

 とあります。別に競争の最中に林檎を拾う必要もないのですが、アフロディテが拾う気を起こさせていた為、アタランテは林檎を拾い、ヒッポメネスが勝利しました。

 

 ここで話が終われば綺麗なのですが、結婚後、アフロディテへの感謝を忘れた為(というか神殿で、その何と言うか、愛し合ってしまった為)に獅子の姿に変えられた、というオチがついています。

 

No3

レダ

Leda

レオナルド・ダ・ヴィンチ(模写)

テンペラ、板、115×86cm(Tempera on panel 115×86cm)

16世紀第1四半期(The first quarter of the 16th century)

ボルゲーゼ美術館(GALLERIA BORGHESE)

 

ボルゲーゼ美術館展

GALLERIA BORGHESE

東京都美術館

20100116-20100404

 今年は知名度の高いギリシア神話の絵画が多かったように思います。No3はダ・ヴィンチさん(のコピー)の「レダ」です。有名で綺麗な絵画でしたが、ちょっと型にはまった感じで迫力がなかったように感じました。でもやはり知名度の高さでは群を抜いていると思います。

 

 レダはスパルタ(スパルタ教育で有名な所です)の王テュンダレオスの妻です。レダは人妻ながらとても美女だった為、大神ゼウスが目をつけます。ゼウスは綺麗な白鳥に姿を変えてレダに近付き、愛の営みを行います。この営みによって有名なディオスクーロイと呼ばれるカストールとポリュデウケス、そしてトロイア戦争の元ともなった絶世の美女ヘレネとクリュタイムネストラの四人が生まれます。

 

 ゼウスが白鳥の姿だった為、卵から生まれた事になっています。カタログには、

 

 数々の模写の中でも本作品は、現在ウフィツィにある作品とともに、多くの点からレオナルドの原画と一致していると考えられるために、非常に重要な作品として位置づけられている(カタログp96抜粋)。

 

 とあります。同じ模写の違う絵画には卵が2つ描かれて、二人ずつ生まれている絵画がありますが、この絵画では二人が産まれ、後の二人はまだ卵の中のようです。カタログには、

 

 ヘレネとクリュイテムネストラが産まれる卵を背後に追いやることによって(カタログp96抜粋)、

 

 とありますので、産まれている二人はディオスクーロイという事になります。それにしてもこの白鳥が下心を持った大神だと思うと何か絵画を観る目も変わってきますね……。